皆さん、こんにちは。
まんじろうです。
「おろち」「漂流教室」「まことちゃん」でおなじみの漫画家・楳図かずおさん(享年88)が亡くなりましたね。
楳図さんが死亡したのは、2024年10月28日。
胃がん療養中で東京都内のホスピスで死去し、葬儀はすでに近親者で執り行われたと言います。
筆者は「おろち」を初めて読んだとき、確かに怖かったですね。
そこでなぜ怖いのか?
改めて分析してみました。
楳図かずおの恐怖漫画、「おろち」に見る因果応報の怖さ
楳図かずおさんのプロフィールと功績
出典:サンスポ
楳図かずおさんは、日本の恐怖漫画の巨匠として広く知られる存在でした。
1936年に和歌山県で生まれ。小学生のときに漫画家を志し、1955年にプロデビュー。
88歳で亡くなるまで、数多くの恐怖漫画や作品を世に送り出してきました。
彼の代表作には、『おろち』、『漂流教室』、『まことちゃん』などがあり、
その独特な表現とストーリーテリングで日本の漫画史に深い足跡を残しました。
『おろち』は、「週刊少年サンデー」で1969年から1970年にかけて連載され、
長きにわたって多くの読者を虜にし、心理的な恐怖を特徴とする彼のスタイルの象徴とも言える作品です。
楳図作品の特徴は心理的な恐怖の描写
楳図作品の恐怖は、霊的なホラーではなく、
登場人物たちの人間関係や心理的な闇から発生する「因果応報」の物語が多いことが特徴です。
特に『おろち』では、物語の中で登場する主人公「おろち」は、
人々の罪や憎しみ、欲望といった負の感情に干渉することなく、それを傍観する存在として描かれています。
この設定により、登場人物たちが自己の運命と対峙する様子が、読者に一種の不安や恐怖を引き起こします。
楳図さんはこの構図を通じて、人間の心の闇がどのように表面化し、結果として惨劇を生むのかを繊細に描き出しました。
不思議な能力を持ち、歳をとることのない謎の美少女「おろち」が、
悲壮な運命に翻弄される人々の人生を見つめていくオムニバス形式の作品。
9つのストーリーから成り立っています。
楳図作品の因果応報と恐怖の演出
楳図作品には「因果応報」が非常に強調されています。
たとえば、『おろち』のエピソードですが…。
【姉妹】
「18歳の誕生日を迎えると醜くなっていく」という血筋の家に生まれた美人姉妹による、
女心の恐ろしさと執念を描く。
【血】
名家に生まれ、優秀な姉と比較され続け惨めな人生を送る妹を中心に、
悲壮な人間模様を描く。
おろちの重要な秘密も明らかにされる、シリーズのクライマックスに当たる作品。
【戦闘】
戦時中に食人の罪を犯した父親が、
戦後、息子にその過去を知られることで父子関係が崩壊していく様子が描かれています。
おろちはただその過程を眺め、時には軽い干渉を行うだけで、
事件が自然な因果によって進行する様子を観察者として見守ります。
楳図漫画ではこのようにして、
「恐怖は超自然な現象ではなく、人間が抱える業や因果関係の中に存在する」というテーマを明確に打ち出しているんです。
「楳図かずお集 現代コミック2」(双葉社)に収められている「おそれ」という作品も、
姉妹の物語です。
作品によってはアルフレッド・ヒッチコックのサスペンス的な要素も含まれていると思いますし、
だから「怖さ」はリアリティを帯び、心理的に深く刺さるものとなっています。
楳図作品の社会的テーマと結びつき
「ぎゃあ~」は手描き
楳図作品には、ただ怖がらせるだけではなく、社会的なテーマも含まれています。
家族間の葛藤など、因果応報の枠組みの中で描かれ、
読者に身近な社会の問題と個人の選択が、いかに予測不能な恐怖と結びつき得るかを暗示。
要は「恐怖とは何か」「人間の内面にはどのような闇が潜むのか」という問いを投げかけているのですね。
楳図作品のユーモアと恐怖の共存
楳図さんは、怖がらせることと同時にユーモラスな一面も見せてきました。
彼がメディアに登場する際に見せる「グワシ!」ポーズや、
赤白のボーダーシャツといったアイコンは、
彼の中にある独自のユーモアを象徴しています。
このユーモアと恐怖の二面性は、彼の作品が多くの読者に親しまれる理由の一つでしょう。
キャラクターやストーリーにリアリティがあるからこそ、
非現実的な状況や人間のダークサイドに対する恐怖が一層強まります。
楳図作品の恐怖がきわだつ影のつけ方
女性の影が怖い
楳図漫画で特徴的なタッチは、影のつけ方でしょうか。
女性の顔の影です。
視覚効果というか、妙に怖いんですね。
それと、ネームの「きゃ~!」と言った言葉も、手書きで描いているから、装飾が怖いんですね。
当時の時代を考えれば、随分と凝っていると思います。
野坂昭如氏は、「仮面と変身の恐怖空間」と題し、
こんなふうに記しています。(楳図かずお集の解説文の一部)
「作者の代表作らしきものを考えてすぐいえることは、
作者の容貌あるいは肉体の変化に対する異様ともいえるほどの関心である。
それに加えて容貌のみにくさと心のみにくさの関係に対するある先験的な偏執、
この二つのことがのっぴきならぬ因果の恐怖のなかに色濃く流れているように思われる。」
そしてこうも綴っています。
「映画の世界では、エンド・マークと共に客席が明るくなり、
われわれは忽ち白日の現実世界にひき戻されるのだが楳図の世界はそうではない。
彼は因果律に忠実に、このようなことは何時までもつづくのだ、
どこにでもあるのだという暗示で一つひとつの世界をいわば中絶させ、
読者をいつまでもそとがわの世界にひきとめようとするのである。」
まとめ:楳図かずおの恐怖漫画の永続的な魅力
楳図かずおさんの作品は、単なるホラーを超え、
心理的・社会的な要素を含んでいるため、読み手の内面に訴えかける強力なメッセージ性を持っています。
楳図さんの死は大きな損失ですが、その作品は多くの読者に愛され、これから永遠に読み継がれていくことでしょう。
筆者もまた読んでいますけどね。
長文を最後まで読んで下さり、ありごとうございました。
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